2007.10.16 Tuesday
泣き虫しょったんの奇跡
泣き虫しょったんの奇跡 著 瀬川晶司
副題に「サラリーマンから将棋のプロへ」とあるように、著者は35歳にして将棋のプロになった人物である。
将棋についてはご存じない方が多いかと思うのでその説明をしておく。
将棋にはプロがいて、「棋士」と呼ばれ、社団法人を形成している。
それには誰でもなれるというわけではなく、厳しい条件が付けられていた。
まずは「奨励会」と呼ばれる下部組織に入会する。
これには年齢制限があり、下は小学生から上は満25歳まで。
そこで何をするのかというと、月に2回東京は千駄ヶ谷の将棋会館に来て、会員同士で将棋を指す。
ここで注意しておきますが、将棋は「指す」と言います。
囲碁の場合は、「打つ」です。
この二つは混同されやすいので、御注意下さい。
さて、その「例会」の成績によって「段級位」が上下する。
入会したばかりは大体5級か6級で、これが好成績を上げると4級3級と上がってゆく。
1級の上が初段で、2段、3段となる。
しかしその次は難しい。
将棋の場合3段までは「プロ」ではない。
4段になって初めてプロと呼ばれる。
サラリーマンで言うと給料に相当する「対局料」が支払われて、棋士としての生活が出来るのだ。
そこでこの昇段には、厳しい条件が付く。
3段の会員同士でリーグ戦を行い、上位2名のみが晴れて4段となる。
このリーグ戦は年に2回行われるので、1年に4名しかプロにはなれないのだ。
さらには年齢制限がある。
満26歳の誕生日を迎えると、自動的に退会になる。
いくら努力しても、もうこれ以上闘うことは出来ないのである。
さて、著者はその「奨励会」に入会した。
中学3年の時である。
そこから努力を重ねて、22歳で3段に昇段する。
しかしプロの壁は厚かった。
8回の挑戦はことごとく退けられて、遂に年齢制限の壁に夢を遮られてしまう。
無念の涙と共に将棋界を去り、27歳にして大学生となる。
大学卒業後、苦労して会社に就職し、サラリーマンになった。
そこで、遠ざかっていた将棋にまた取り組むと、なんと「楽しい」ことに気づくのだった。
奨励会のころには「血と汗を流して」苦しみながら将棋に取り組んでいた。
しかし社会人の今では、楽しんで将棋を指すことが出来る。
将棋とはこんなにも楽しいものだったのかと、感じながら腕を上げる。
また将棋の勉強をはじめた瀬川氏は、ついにアマチュアの最高峰に上り詰める。
そして、各種の新聞棋戦などで、念願の「プロ」と対局することになる。
凄いことには、そこで7割の勝率を上げてしまうのだ。
普通は、いかにアマチュアの強豪と言えども、対プロの勝率は2割ぐらいです。
その功績が認められて、彼は「プロにしてください」という嘆願書を出すことになる。
これが前代未聞空前絶後の出来事で、今までこういう形でプロになった人はいない。
これを受けて将棋界は大揺れ、全棋士による投票で、資格試験を行う決定をした。
6人のプロ棋士と「勝負将棋」を指して、3勝以上を上げれば晴れてプロへの道を開こうというのだ。
勝負将棋は公開対局で、入場料まで取る一大イベントになってしまった。
しかし、彼はその試練に立ち向かい、見事難関を乗り越える。
「時流に乗った」という考え方も出来ると思うが、やはり努力である。
決して諦めないと言う強い意志が、彼の人生を導いたのだと思う。
目標に立ち向かうその姿に、元気づけられた人も多いのではないだろうか。
私ももう少し頑張ってみようかな。

Trackback URL
http://denkigama.tblog.jp/trackback/162268
- ブログのお引っ越し (05/31)
- 弁慶@紺屋町 (05/30)
- ナカミヤ@さらばレバ刺し (05/29)
- レバ刺し禁止令 (05/28)
- らあめん花月嵐@中華そば竹食堂 (05/27)
- 豚龍@下島
⇒ 電気がま (11/30) - 豚龍@下島
⇒ いし (11/30) - 平成元年のベストテン その2
⇒ 電気がま (10/24) - 平成元年のベストテン その2
⇒ shake-jp (10/23) - 高揚@東中野
⇒ 電気がま (03/31) - 高揚@東中野
⇒ 原口 (03/31) - 天神屋には行かないぞ
⇒ 電気がま (08/10) - 天神屋には行かないぞ
⇒ ママ (08/09) - 三勝そば@川合
⇒ 電気がま (05/20) - 三勝そば@川合
⇒ 電気がま (05/20)
- ルミネtheよしもと@久しぶりで
⇒ https://www.newsbreak.com/news/3264401580966-chang-s-beach-maui-s-hidden-gem-featured-in-maui-now-gu (12/21) - 三好屋平和店@平和
⇒ 瀬名川通信 (03/05) - 駒形石ヶ谷@駒形通
⇒ 瀬名川通信 (01/17) - くさデカに第二美濃屋さんが登場
⇒ 瀬名川通信 (01/14) - みんみん@ワンタンメン
⇒ 瀬名川通信 (11/20) - 天下一@新伝馬
⇒ 瀬名川通信 (10/05) - 自転車はルールを守って
⇒ ごはんとさっかーとぐだぐだと (05/29) - 久松@瀬名川
⇒ 瀬名川通信 (03/07) - 紀尾井@宮ヶ崎町
⇒ 瀬名川通信 (02/01) - 清見そば本店@満員でも
⇒ Fat-Diary (01/18)
- May 2015 (27)
- April 2015 (27)
- March 2015 (26)
- February 2015 (24)
- January 2015 (25)
- December 2014 (27)
- November 2014 (26)
- October 2014 (27)
- September 2014 (27)
- August 2014 (31)
- July 2014 (28)
- June 2014 (26)
- May 2014 (27)
- April 2014 (26)
- March 2014 (26)
- February 2014 (23)
- January 2014 (26)
- December 2013 (27)
- November 2013 (28)
- October 2013 (27)
- September 2013 (27)
- August 2013 (28)
- July 2013 (27)
- June 2013 (24)
- May 2013 (27)
- April 2013 (27)
- March 2013 (26)
- February 2013 (24)
- January 2013 (24)
- December 2012 (27)
- November 2012 (26)
- October 2012 (27)
- September 2012 (25)
- August 2012 (27)
- July 2012 (26)
- June 2012 (26)
- May 2012 (29)
- April 2012 (25)
- March 2012 (27)
- February 2012 (23)
- January 2012 (24)
- December 2011 (27)
- November 2011 (26)
- October 2011 (26)
- September 2011 (26)
- August 2011 (27)
- July 2011 (26)
- June 2011 (26)
- May 2011 (27)
- April 2011 (26)
- March 2011 (14)
- February 2011 (24)
- January 2011 (24)
- December 2010 (27)
- November 2010 (26)
- October 2010 (27)
- September 2010 (26)
- August 2010 (26)
- July 2010 (27)
- June 2010 (26)
- May 2010 (26)
- April 2010 (26)
- March 2010 (27)
- February 2010 (24)
- January 2010 (24)
- December 2009 (27)
- November 2009 (25)
- October 2009 (27)
- September 2009 (26)
- August 2009 (25)
- July 2009 (28)
- June 2009 (22)
- May 2009 (20)
- April 2009 (26)
- March 2009 (26)
- February 2009 (21)
- January 2009 (25)
- December 2008 (26)
- November 2008 (25)
- October 2008 (28)
- September 2008 (26)
- August 2008 (24)
- July 2008 (27)
- June 2008 (25)
- May 2008 (27)
- April 2008 (26)
- March 2008 (23)
- February 2008 (23)
- January 2008 (23)
- December 2007 (23)
- November 2007 (24)
- October 2007 (27)
- September 2007 (21)
- August 2007 (24)
- July 2007 (24)
- June 2007 (25)
- May 2007 (24)
- April 2007 (27)
- March 2007 (27)
- February 2007 (28)
- January 2007 (28)
- December 2006 (27)
- November 2006 (29)
- October 2006 (30)
- September 2006 (29)
- August 2006 (28)
- July 2006 (30)
- June 2006 (29)
- May 2006 (30)
- April 2006 (25)
- March 2006 (11)
- December 2005 (1)
- November 2005 (3)
- October 2005 (3)
- September 2005 (6)
- August 2005 (4)
- July 2005 (4)
- June 2005 (4)
- May 2005 (5)
- April 2005 (4)
- March 2005 (5)
- February 2005 (4)
- January 2005 (2)
- December 2004 (4)
- November 2004 (5)
- August 2004 (1)
Comments
私も将棋は好きで、夏休みに松坂屋で開かれた中学生の将棋大会に参加していました(30年以上昔)。確か広津先生が解説&指導に来ていたのを覚えています。
瀬川氏のプロ挑戦の話、知っていました。本になっていたんですね。早速読んでみます。ご紹介、ありがとうございました。
PS,通勤途中の車の中で「六甲下ろし」歌っています。球場で歌いたかったなぁ〜。
Comments
>スガピーさん
私も最近は将棋を指していません。
パソコンのソフトも強くなってしまい、これはこれで勝てないのもしゃくになります。
本書ですが、教育についてもご参考になると思います。
「六甲おろし」は当分先になりそうですね(泣)
Post a comment