静岡ラーメン放浪記

　学生時代、大学のすぐ近くに「養老乃瀧」というチェーン店があった。
貧乏学生ではあったが、酒はビール専門だった。

　金がないなら飲まなきゃ良いのに。
いや、少なくとも倹約して、酒屋でビールを買って飲めば良いのに。
と思うでしょうが、酒屋でビールを買ってきて、下宿で飲むのは、運ぶ手間が掛かる。
冷蔵庫の中に冷えたビールが常時待機している、というほどのお金持ちではなく、気が向いた時に飲みたいのだ。
さらにいえば、飲み干した空き瓶を持ってゆくのも面倒だ。

　というわけで、この養老乃瀧では常連の客になった。
何せ安かった。
特製の「養老ビール」大ビン（実はサッポロビール）が当時破格値の一本２００円。

　店に入るや、マスターが栓を抜いてくれる。
つまみはこれも名物の「煮込み」２００円。
特製といっても本部で大量に作ったビニールパックを開けて、湯煎するだけ。
そこに豆腐を加えて出来上がりという、簡単なものだが、旨かった。

　知らない客は、マスターに
「これ旨いねえ、どうやって作るの？」
「いやいやちょっと秘伝の出汁があってね、企業秘密です」
「仕込みに手間ひま掛けてるんですよ」
「なるほどねえ、旨いはずだ」
陰で笑っている私。

　１５分ぐらいで１本目は空いてしまう。
だいたい２本目で、つまみが無くなる。
当時の予算は、一晩で千円。

　この後は二コースに分かれる。
１５０円の「イカ焼き２本」と追加でビール。
これだと無難なところなんですが、だいたいの場合は
追加でビール２本、ということになる。

　思えば昔から酒ばっかり飲んでいたなあ。