2010.03.17 Wednesday
科学か感性か
科学か感性か
サイエンティストというのは美しい響きで、出来ればそう名乗りたいですね。
イギリスの高名な科学者、マイケル・ファラデーは、1831年導線と電球をつないだ回路の上で磁石を動かすと電球が灯るという電磁誘導の法則を発見しました。
彼が自宅の実験室で友人たちを前にこの実験をした時の話です。
電球の光を見とどけた町の有力者が、彼にこんな質問をしました。
「たしかに面白い発見だが、それがなんの役に立つのかね?」
それに対してファラデーはこう返したといいます。
「生まれたばかりの赤ん坊は、なんの役に立つのですか」
現在では電磁誘導の原理をもちいて、発電機などの重要な電気器具が数多く作られています。
電磁調理器具として今ではお馴染みになった、IHクッキングヒーターもこの原理の応用になります。
ファラデーの発見は200年後の現代に大きな成果となって広く活用されているわけですが、もちろん彼自身さえもそれを予想していたわけではありません。
科学の目というものは現実ではなく未来を見ているのだと言う話は説得力があります。
もちろん今ある現状の困難を改善しようとして、実験をかさねるというのも素晴らしいことですが、未知の目標に向かって進むのが研究者の理想でもあります。
物事の評価を下す場合、私たちは日ごろの経験からつい「役に立つのかどうか」とか「貨幣価値に直すといくらぐらいになるのか」という判断をしてしまいます。
これはこれで正しいのですが、すべてをその観点で推し量るのは間違いだと思います。
「無駄なこと」や「意味のないこと」だと切り捨ててしまっているものの中にダイヤモンドの原石があるのかもしれません。
日本人の科学離れが言われ始めてからずいぶんと経ちましたが、私にはそれがいわゆる拝金主義の台頭に重なるように思えて仕方がありません。
原点に立ち返って、真理を探究する科学者の心を大切に育ててゆくことは、これからの日本のために重要な課題だと思います。
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