静岡ラーメン放浪記

はてさて


「我が家のすぐ近くにパチンコやさんがあってね」

さる友人のお話だ。

　たまに行くんだがそこの店長さんと仲良くなった。

　借りていた駐車場に物件が建つことになり困っていたところ、パチンコやさんの駐車場を使ってもいいということになった。

　でも、そこは個人のものではないので、駐車場としては契約できない。
店長さんから、会社には黙っていてやるから勝手に停めてもかまわないというお墨付きをいただいた。
もちろんタダというわけにも行かないので、盆暮れにはお中元やお歳暮として、一万円の商品券を送って済ませていた。

　そんな時に急な人事異動があって店長さんが替わった。
親切なことに前の店長さんがしっかりと申し送りをしてくれたため、替わった店長さんもそのまま駐車を黙認してくれた。
もちろん付け届けも変わらずに続けておいた。

　そんなある日トラブルが起こった。
台風で駐車所の脇にあった立て看板が吹っ飛んで停めてあった車にぶつかったのだ。
閉店後だったから運の悪い車は二台だけだったが、その一番重傷だったのが彼の止めてあった車だ。

　そこで問題が発生。
なぜ車が止めてあったのか。
１台の車はたまたま用事があって置きっぱなしになった、という理由が認められて保険が下りた。
問題は彼の場合。

　店長は真っ青になって、なんとかしてくれと泣きつく。
長年無断で駐車場を利用させて、しかも裏金までもらっていたことが分かれば、首が飛んでも仕方がない。

　じゃあ修理代を払ってくれるのかといえば、それも出来ないと返す。
こちらも後ろめたいものがあるので、仕方なく自腹を切った。
修理代が意外にかかって３年分の駐車代並みになった。
もちろん再び車を停めるわけにも行かず、遠く不便になったが新しく駐車場を契約した。

　「騙された、全くしょうがないやつだよなあ」
「こっちは仕方がないから泣き寝入りだよ」
「あんなパチンコやなんか二度と行かないよ」

　息巻く彼だが、もちろん決定的なものが違っている。
何だか原発の事故に似ているような気がした。
世の中一方的に利益だけを受けるようなことはまず無い。
自分に都合の良かった時は黙っていて、体勢が悪くなったら文句を付けるというのはいわゆる人間の性なのかもしれない。
いいところだけもらって、トラブったら逆にそっちのせいにすというのも情けないような気がするが、世の中そんな風潮が強いですね。


　（このお話はフィクションです）