静岡ラーメン放浪記

カラスはホントに悪者か　大田眞也著

　表題からすると、「カラスは悪者ではない」と言いたいように感じるが、内容はカラスの生態が主で、別段味方をしているわけでもないようだ。
いやいや、結構カラスって怖いんだなあと、あらためて思わせます。

　私たちの身近にいるカラスたち。
生態はなかなか説明しにくいので、本文にあったカラスの寓話を２話紹介します。
カラスって頭が良いのか、それともそうでないのか、全く不思議ですね。

カラスとキツネ（イソップ寓話より）

　カラスが盗んできたチーズをくわえて、木の枝に止まっていました。
それを見たキツネは、そのチーズが欲しくなりました。
そこでキツネはカラスに向かって
「あなたは姿形も羽根の色つやも素晴らしい」
「あと声も良かったら申し分なく、きっと鳥の王様になれるでしょう」
と心にもないお世辞を言いました。

　すると気をよくしたカラスは、よい声を聞かせてやろうと、ついうっかり口を開いてしまいました。
くわえていたチーズは、ぽろりと下に落ち、キツネのものに。

　欲しかったチーズをまんまとせしめたキツネは、今度は
「鳥の王様になるには、知恵だけが足りないね」
と憎まれ口を叩いて去ってゆきました。

カラスとヘビ（古代インドの寓話より）

　バンヤンの大樹に巣を作ったカラスの夫婦はその場所が気に入り、長く棲みたいと思っていました。
ところが黒ヘビがやって来て、その大樹の根元に住みつき、カラスのヒナを片っ端から食べてしまうようになったのです。

　そこで雄ガラスはよそへ引っ越そうと言い出しました。
しかしその場所が気に入った雌ガラスは、ヘビを撃退する方法を色々思案し、親友の知恵者、山犬に相談しました。

　山犬が言うにはそれは簡単で、王様か金持ち貴族の高価な宝飾品を掠め取って、ヘビの穴に落とすとよい、と教えてくれました。

　そこでカラスの夫婦は、池のほとりで宮廷の女たちが、宝石の装身具を外して池の端において遊び戯れているのを見て、それを実行しました。
雌ガラスがその宝石類を掠め取り、山犬に言われた通り、ヘビの穴に落としたのです。

　すると家来たちが後を追ってきて、ヘビをこん棒で打ち殺し、宝石類を奪還してゆきました。
それでカラス夫婦は引っ越さずにすみ、平和に長く暮らしたということです。