静岡ラーメン放浪記

勝負のこころ

　大山康晴　著

　将棋の、故大山康晴１５世名人が昭和５１年に書き上げたものです。
今回文庫本として新しく出版されました。
おぼろげな記憶によりますと確か出版当時も読んだのではないかと思います。
その時の大山名人の年齢は５３歳です。
さすがに時代を築き上げた大名人で、私にはおよびもつかない珠玉の名言がちりばめられています。

　その中から幾つかをご紹介してみましょう。

「助からないと思っても助かっている」
終盤で形勢が悪く、つい弱気が出て、あきらめようとした時です。
「助からない」という弱気を吹っ飛ばして、「助かっている」と思い直したとたんに、好手が見えてくる。
　これは凡人には難しいもんです。

「棒ほど望めば針ほど叶う」
　これは大山名人の師匠である、木見八段が弟子たちを前にしてよく言っていたそうです。
芸の道という物は厳しく、自己満足し安心したとたんに進歩が止まってしまうと言います。

「教えることは学ぶこと」
将棋の指導は、勉強と違って、弟子の手を取って教えることは少ないそうです。
すべては自分で学び取れ、という突き放した指導方法です。
弟子を厳しく指導することは、それ以前に自分に厳しくなることだと、大山名人は言っています。
別の言い方をすれば、自分が無心になって相手と同じ気持ちになること。
自分が無心にならなければ、とうてい相手を納得させることはできないのですね。

「いつでも出直しの道はある」
これこそ６０歳を過ぎても現役バリバリの活躍をし、生涯Ａ級棋士として輝いた大山名人ならではの名言です。
すべてのタイトルを失い、どん底になってもめげずに復活した闘志。
一度や二度の失敗でくじけてはいけない。
栄光が大きければ大きいほど、奈落の底も深いんですが、大丈夫。

大山名人の不屈の闘志はやはりすごいものです。