静岡ラーメン放浪記

たち木＠新橋

　都合により、中略。

　南千住の駅に向かって歩きます。
「大坪屋」さんが空いているかなと思って覗きますが、まだ準備中のようで明かりが点いていません。
ここは潔く諦めて電車に乗ります。

　そこで急遽思いついたのは、銀座の「ささもと」さんです。
上野で山手線に乗り換え、有楽町まで行きます。
だいたい酔いが回ってからの予定変更は失敗する例が多いんですが、はたして今回はどうなのか。
地図を片手にお店を探しますが、小雨の中でなかなか見つかりません。

　そして何とかみつけたお店を見てみれば。
無情にも「開店は６時」のお知らせです。

　雨の中をあと５０分も待つのはなかなか難しいですから、またしても予定を変更します。
別の言葉では「行き当たりばったり」とも言いますがね。
そこでまたまた駅に戻って新橋まで行きます。
このあたり、よくぞ迷子にならなかったものです。

　当然新橋でもお店が見つからず、あちこちと彷徨した末に見つけたのがこのお店です。
まあ分かってしまえば分かりやすい場所だったんですけどね。
本日の３軒目はここ新橋の「たち木」さんに入ります。

　お店は細長いカウンターに奥のテーブル席という、立ち飲みのお店です。
先客はサラリーマン風の若い男性陣で、３グループぐらい５、６人でしたか。
席を詰めて一番手前のあたりに着きます。
「チューハイお願いします」

　ここは立ち飲みのお店ですが、お勘定は最後に払うシステムです。
さて焼き物は何にしましょうか。
壁のメニューから見繕って
「キモ焼きと、イカダお願いします」
「イカダはネギだけどいいの？」
「あそうか、じゃあ、くりから焼きとキモ焼きでお願いします」

　そう、勘違いして鰻の短冊にしたものと思っていました。
初心者だと分かっていて、親切に聞き返してくれる。
これは嬉しい心遣いです。
居酒屋のご主人だと、威張りくさっていて妙に初心者に素っ気ない方もいますが、このお店は違いました。
やはり長く繁盛するお店は、ご主人の人柄もよろしいようです。

　目の前の焼き台で、注文の鰻が焼かれているのを見ながら、グラスを傾けます。
さすがに流れるような手さばきで、串が焼かれてゆきます。
ご主人と手伝いのオネエサンの二人で営業されているようです。

　「おまちどうさまです」
小皿に乗って出てきました串ですが、綺麗な鰻ですね。
キモ焼きはもちろん鰻の内臓。
くりから焼きは鰻の身を折り曲げながら串に刺して焼いたものです。
さっそく山椒を掛けていただきます。

　こういうしっかりとした味のつまみはお酒が進みますね。
お客さんの和やかな談笑で、ゆっくりと時が流れてゆきます。
またたくまにチューハイが空き、お代わりをします。
追加の串は、カブト焼きにつくねをお願いしました。
鰻以外のものもなかなか美味しいですね。

　無口なご主人ですが、存在感があります。
立っているだけで様になる方はなかなかいませんからね。
この雰囲気だけでここに来たかいがあったというものです。

「ごちそうさまでした」
「１８６０円になります」
名残は惜しいが電車に乗って帰路に着きましょう。