静岡ラーメン放浪記

断章取義
だんしょうしゅぎ

　忘れたころにやってくる、ご存じ四字熟語シリーズです。
といっても、この前に書いたのは何だったのかも忘れましたが。

　この熟語の意味は、他人の文章や談話の一部を、全体の主旨から切り離して勝手な引用の仕方をすることです。
その由来は、「左伝」のこんな話から来ています。

　春秋時代、斉の宰相慶封の子慶舎は、父が政務をないがしろにしているのをいいことに、父にもまさる横暴なふるまいが多かった。
国外に逃亡していた一族の、廬蒲葵（ろほき）を呼び返して臣下に加え、自分の娘を妻として与えた。
古代中国では、血族内の婚姻は近親結婚と見なして許さぬ定めだったが、慶舎も廬蒲葵もこの社会道徳を無視してはばからなかった。
　慶舎の家の者がこのことを廬蒲葵になじると、彼は平然としてこう答えた。
「慶舎どのが気にしたいものを、何でこちらが気にすることがある。『詩経』から詩を引用するときにも、章を断ち切るのは普通じゃないか。わしも欲しいところだけを取るのだ。一族だのなんだのと、わしの知ったところか」
（当時諸国間の外交交渉や、使節をもてなすレセプションの場で、めいめいが『詩経』の一節を引用したり歌ったりして、自説の論拠とし自分の心境の比喩とする習慣が、広く行われていたという）

　その後まもなく、慶氏の横暴に対する周囲の反感がつのってくると、廬蒲葵は率先して反乱に加わり、慶舎を刺し殺したといいます。

引用：「四字熟語集」奥平卓　和田武司　著　より

　自分に都合の良い部分だけを切り取って使うというのは、昔からよくあったことなんでしょうか。
最近ではビデオが発達していますから、発言の一部やセンセーショナルなフレーズだけが強調されて報道されることがあります。
前後のつながりからすればたいした意味ではないのに、その部分だけを見たり聞いたりすると、全く別の印象を受ける場合があります。

　これから選挙が始まりますが、揚げ足取りというか、重箱の隅を突っついて攻撃する手法はもう止めて欲しいですね。
きちんと政策で勝負して欲しいと思うのは私だけではないと思います。

　「良いとこ取り」で万事旨く行くほど世の中甘くはないでしょうがねえ。