静岡ラーメン放浪記

登龍＠麻布十番

　さて、今シーズン初の東京行きです。
師走とはいえこのところまだ暖かかったのですが、今日はガツンと来る冷え込みでした。
その寒さの中を駅までひたすらに自転車を漕ぎます。
改札口を抜けてホームに行くと、ちょうどいつもの列車が入ってくるところでした。
その８時５分発熱海行きに乗り込み、勇躍東京へと向かいます。

　小田原、大崎目黒と列車を乗り換え、メトロ南北線でたどり着いたのは「麻布十番」駅です。
ここから地図を片手にお店を探しますが、さて今日はどうかな。
この地図というやつも、なかなかに意地悪でしてよくからかわれます。
でも、今日はさすがにまだシラフなので大丈夫だったようですね。
（大体この辺だろう）
と、当たりを付けて進んで行くと、呆気なくお店にたどり着きました。

　「高級中国名菜皇麺　登龍」
いかにも麻布十番という感じ（どんな感じじゃい！）　のお店が本日の１軒目になります。

　お店の前には真っ赤な看板。
何でも創業５０周年の特別大謝恩サービスだそうです。
看板にもある「四川皇麺（タンタンメン）」が１８００円のところ１０００円の大サービス。
なんという太っ腹でしょうか。
さっそくお店に入りましょう。

　「いらっしゃいませ」
きちんとした制服を身にまとった二人のボーイさんが出迎えてくれます。
４人掛けのテーブルが６席ほどの普通のお店に見えますが、かなりの高級感がにじみ出てきます。
ただいま１１時半ほどで、先客は常連さんらしい熟年のご夫婦が一組だけです。
どの席に座るのか迷いましたが、図々しくひとりでテーブルを独占します。

　すぐにおしぼりとお箸にナプキンが置かれます。
渡されたメニューには、あれこれと書いてありましたが、貧乏人はもちろん「タンタンメン」ですね。
ボーイさんはがっくりした表情で（嘘ですよ）奥へと引っ込みます。
お腹が許すならば、「餃子５個２０００円」や「蟹炒飯４０００円」なんかも食べてみたいんですが、最近胃袋が小さくなったからなあ。
すいません私、嘘を付いておりました。
小さいのは胃袋ではなく私のお財布と肝っ玉でしたね。

　気を取り直しておしぼりを使うと、すぐに前菜が出てきました。
たかがタンタンメン１杯というのに、さすがは高級店です。
ジャスミン茶に、右手が「青唐辛子」左手が「クルミの飴炊き」です。
青唐辛子はそれほど辛くはなく、味付けは酢が利いた感じです。
クルミをつまんでポリポリやりながら出来上がりを待ちますが、あっさりと出てきました。

　うーん、こんなタンタンメンは初めて見ました。
凄い濃厚なスープです。
どろっとしているのはていねいに摺り下ろした胡麻で、それが雲のように横たわっています。
具は青菜のみですが、挽肉がどっさりと乗っています。
このスープが見かけ以上に辛いです。
はじめは見くびっていましたがとんでもない。
後からじんわりと辛さが胃袋に染みてきました。
辛いけれど美味い、いや美味いから辛い。
あれ、何か混乱してきました。

　麺はかなりの細麺で、縮れた麺にスープがよく絡みますね。
これはじっくりと味わって食べるタンタンメンですね。
何しろスープが美味しいので、レンゲですくって、どんどんと飲んでしまいます。
おかげで辛さが止まりません。
現在胃袋の中はどうなっているのか心配ですが、それをよそにレンゲが止まらないこの不思議さ。
なお、辛さを考えてのことでしょうが、タンタンメンには冷たいジャスミン茶が付いてきます。

　余談になりますがこの辛さは翌日にも体験することができます。
題して
「入り口と、出口で楽しむタンタンメン」
下品になってすいませんでした。

　さて、お店には空いているかと思いきや電話がじゃんじゃん掛かってきます。
高級店には珍しく、出前も受けているようですね。
こういう料理を会社でランチにできれば最高ですが、やはり地元の優良企業さんがごひいきにされているんでしょうか。
なお、配達料が３００円ほどかかるんだそうです。
バイクで配達というのも合わないから、ベンツであのボーイさんがご配達するのかもしれません。

　さらには、常連さんも数名でやって来ます。
その方たちは当然のように２階に案内されます。
「おー、ここで食べたかったんだ。昨日が休みだったからまた出直してきたよ」
「車は前に置いてあるから」
お店を出る時にちらっと見ましたが、黒塗りの高級車でした。
何か次元が違う気がしましたね。

　すっかり満足してお会計をします。
「１０００円になります」
当然このお値段ですが、何か別料金が付くんじゃないかと冷や冷やしました。
１８００円のところを１０００円ですから８００円も得しちゃった。

　俺もいつか出世して、高級車で乗り付けて、餃子と蟹炒飯を全員に奢ってやるぞ。
そんな気分にさせる美味しいランチでした。