2007.07.11 Wednesday
りこうなハンス2
またハンスは驚くべき記憶力がある。
暦に関する問題では、質問する年の月日を言うと、正しい曜日を即座に答える。
かなり前にたった一回だけ会っただけの人物を識別することも出来る。
こうした記憶力や理性に基づくらしい驚くべき応答は、ハンスの非常に鋭い感覚によるらしい。
ウマは一般に視力が弱いとされているのに、ハンスは遠くの物も正しく数えた。
また、人の話し声の微妙な差異も聞き分けられるような耳の持ち主らしい。
さて、ハンスの行動について、大きく2つの説が立てられたという。
一つは、全ては単なる機械的な記憶力のみに基づくと言う説。
つまりこのウマは「学習させられたウマ」だという。
ハンスの頭には様々な問題に関する答えが記憶されていて、それにしたがって答えるのだというのだ。
なんでも動物の脳には何世紀にもわたって休息している部分があって、そこには莫大なエネルギーが蓄積されているという。
それは身か偉人の驚くべき記憶力を引き合いに出して語られる。
二つ目はトリックだという説である。
飼い主から送られる特定の合図にしたがっているという説だ。
世間一般の常識としては、この見方がおそらく大勢を占めるのでは無いだろうか。
しかし、観察眼の優れた多くの人々がオステン氏を観察したが、不審な点は見つけられなかった。
また、奇術組合の組合長で、トリックのことならなんでも熟知している人物でさえも、飼い主に不審な点はないと認めている。
著者は、ハンスに対して様々な実験を行い、ついにその実態を究明することが出来た。
それを全てあげると余りにも長すぎるので、要点のみを記すことにする。
結論から書くと、ハンスは質問者の体の僅かな動きを、見つけることが出来るのだ。
ハンスは幾つかの合図にしたがって動いているというのだ。
この動きが観察されるとウマは動きを止める。
その時の数そのものが、問題の正解だと言うことになる。
この合図は、質問者の頭部あるいは胴体の、特定の位置や動きであることが判明した。
そしてそれらはどの質問者の場合も、決して故意に送られているのではない。
あくまでも不随意に発せられているのだという。
更には発した当人もそのことに全く気づいていない、無自覚的なたぐいの物なのだ。
著者の素晴らしい点は、これと同じことを自分でやってみたと言うことだ。
カードに書かれた数字を見えないように覚えてもらい、それを当てる。
さすがに「ウマよりも正確」ではなかったが、訓練により成果が出たのだ。
結論として、ハンスは「ウマ並はずれた」動態視知覚力、動体視力を持っている。
かなり敏感な観察力と、優れた記憶力もあった。
よく考えると、やっぱり相当に頭の良いウマだったように感じられる。
間違いなく「りこうなハンス」ですね。
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