2008.04.29 Tuesday
燃料電池
久々に感心した話をご紹介します。
「化学」で、水の電気分解についてお話しした時のことです。
講義のあとで、一人の学生からこんな質問がありました。
化学実験の時間に水の電気分解の実験を行い、無事に成功した。
その後で、電極を電源から外して、こちらを豆電球につないだという。
ここでご存じない方のために補足しておきますが、「水の電気分解」は薄い硫酸水溶液に電流を流して行います。
すると電気のエネルギーによって、水(H2O)が、水素(H2)と酸素(O2)に分解されます。
これが電極を覆うガラス管の中にたまってゆく。
彼はこの実験の途中で、まず電源を外した。
次に電源ではなく、水素と酸素の方に豆電球を繋いだのです。
「そうしたら豆電球が光りました」
その解説をして欲しいというので、それは逆起電力が生じたせいだと話しました。
「これは燃料電池と同じ原理でしょうか」
「まさしくその通り」
簡単に言うと電気分解の逆の反応が起こって、逆向きに電流が流れた事になる。
実はこれが燃料電池のシステムそのものなのですね。
「でもなんでそういう実験をしたの?」
「自分の予想が正しいか確かめたかったからです」
教師志望の彼は「教育実習」で学校に出向き、化学の実験の助手をしたときに考えたという。
「それを生徒に話したんですが、少し自信が無くて」
「いや、間違いなく、あなたの考察は正しいですよ」
「でも、良くそれを考えついたもんだ、素晴らしい」
恥ずかしそうに照れている彼を、目一杯褒めてしまいました。
科学という学問は、結果を予想して、実験によって確かめる、くり返しで進歩してきたものです。
今世の中に欠けているのは、実践する心なんだと思います。
頭でっかちの理屈だけで判断してはいけません。
こういう人が教師になってくれたら、日本の未来も明るいものだと思うんですがねえ。
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