静岡ラーメン放浪記

きじ亭＠七間町

　新規オープンした、今話題の「つけ麺専門店」である。
開店は９月１０日というから、ほぼ１ヶ月ほどが経過したことになる。
この「つけ麺専門店」というのは、静岡では珍しい、と言うかたぶん初めてだろう。

　営業時間がお昼のみという、なかなかに気まぐれなお店で、売り切れご免ということらしいので早めに行こうと自転車を飛ばす。
火曜日の１１時２０分に目指すお店に到着した。

　場所は七間町を「ミスド」の角で曲がり、左側の飲み屋街の並びにある。
昼間だから当然他の店は閉じられていて、まあ迷うことはないでしょう。
自転車を置き店に入ると、あれ、一番乗りだった。

　店は居酒屋を改造したものらしく、真ん中の厨房をぐるりと囲むカウンター席のみ７、８席とこじんまりしている。
巨体のご主人は暇そうに椅子に座っていた。

　入り口すぐの端席に座って、「つけ麺（７００円）」を注文する。
さっそく中央の調理場に入って、色々と作業をするご主人は寡黙であり意外に若い。
麺を茹でるのにはきちんとタイマーを使い、茹で加減を計っている。

　カウンター前には「つけ麺の食べ方（基本）」と書いてある。
うん、私のようなシロウトでもこれを読めば美味しく食べられますね。

　ご主人は茹で上がった麺を冷水でさらし、水気を切って三角の皿に盛りつける。
麺の上に具を乗せてゆくのだが、それが一人前ずつあらかじめ分けてあるのだ。
茹でた人参とホウレン草にねぎがプラスチックの製氷皿みたいな容器にスタンバイされている。
それを箸にとって、麺の上に載せてゆく。

　大きな体に似合わず、けっこう繊細な神経の持ち主だとお見受けした。
そこにノリを１枚と、豚肉２切れを乗せて完成だ。

　丼がまず出される。
この三角形の丼は、初めて見た。
なかなかにユニークな丼だが、更にユニークの上を行くのが、麺そのものだ。
極太麺という形容が果てしなく似合う、歯応えのある麺だ。

　続いて丸い器に入った付け汁が出される。
表面には油が浮き、ゴマが散っている。

　さて、麺を取り上げて付け汁に入れる。
これがなかなか重くて、適量をすくい取るのに苦労する。
付け汁を絡めていただくと、和風の出汁が口中に広がる。
見ると、付け汁の中には鰹節らしきものが入っている。
最近はやりのつけ麺とは一線を画して、甘さを控えた出汁の強い付け汁だ。
味もそれほど濃いめではなく、食べやすかった。

　さすがにつけ麺なので、麺の量は多いはずなのに物足りない。
瞬く間に完食してしまった。

　「食べ方」に習って、「スープ割り」をお願いする。
とはいえ、店内にはまだ他の客はいず、私と店主の二人きりだから、目を見れば分かるのね。

　それにしても寡黙なご主人で、ただ黙々と仕事をこなしている。
スープを入れた容器から、丁寧にお玉で掬って付け汁に合わせる。
それを受け取って、「スープ割り」を楽しむことにする。

　ちょうど良い塩加減になって、そのまま飲むのにぴったりとしている。
美味しいけれど塩分が気になるので、飲み干すまでには至らなかったが、シメには良いですね。

　「どうもごちそうさま」
カウンター越しに支払いを済ませ、店を後にする。
「ありがとうございました」
ん、いい声出してるじゃないか。