静岡ラーメン放浪記

世界一役に立たない発明集
　アダム・ハート＝デイヴィス　著

　1879年、ジョージ・ウィリアム・ギャレット師が、通常動力潜水艦を世界で初めて設計・建造し、進水させた。
新聞は「きわめて成功に近かった」と報じたが、悲しいかな、「きわめて成功に近い」と「成功」とは、似ているようで全く違う。
特に潜水艦の場合は・・・。
この「成功」と似て非なる部分が本書のテーマである。

　著者によるこの紹介文が、内容を程良く表している。
まあ世の中には変わった発明家がいるもので、思わず笑ってしまうものから、もっともらしいものまで千差万別だ。
その中の、これは発明とは余り関係のないエピソードを一つ。
　
　チャールズ・ダーウィンの祖父、エラズマス・ダーウィンは、その生涯の大半を英国スタフォードシャー州リッチフィールドで暮らした。
彼は非常に太った医師で、周辺の村々の患者を往診するために自家用の馬車が必要だった。

　彼は医師として名声を博していたので、ある時などは、一人の男性がロンドンから遠路はるばる診察を受けに来たこともあった。
診療後エラズマスが、「どうしてわざわざお越しになったのですか？」
「ロンドンでしたら、高名なウォレン医師がいらっしゃるでしょうに」

　と、その男性に尋ねたところ、男は言った。
「私がそのウォレン医師です」

　発明の中には、化学の発達した現在でも不可能なものがある。
その一つは「永久機関」
これは中世の「錬金術」と同じで、物理学的に不可能だということは言うまでもない。
それでも、図面やその詳しい「理論的？」な説明を読むと、もしやと思ってしまうから、面白い。

　「人力で空を飛ぶ」という機械も、現在ではかなり進歩している。
昔の「空を飛ぶ機械」は、小さな羽根を人間の手または足で羽ばたかせる構造のものが多く、これでは重くかつ人間の力は弱いので、全く飛べません。
それをプロペラに替え、軽い素材を開発すると共に、空気抵抗と重力にうち勝ってゆきました。

　1977年８月２３日、クレーマー賞の５万ポンドの賞金を狙って、サイクリストでありかつ、ハンググライダーの達人でもあるブライアン・アレンが、ペダルを漕いで空に舞い、規定の８の字コース（８００メートル離れた２地点の周りを８の字型に飛ぶコース）を回ることに成功しました。

　この記録を達成した時にアレンが乗っていたのが、航空工学博士ポール・マクレディが設計した、ゴッサマーコンドル号だった。
この飛行機は重さが７０ポンド（３２キログラム）と超軽量であるにも関わらず、翼の長さが９６フィート（３０メートル）もあった。

　これなどを見ると、なるほど発明というものには理論的な部分と、発想的な部分とが入り交じっているものだと思います。
適当な発想で出来てしまうものもあり、深い知識でも難しいものもある。
まあ、だから発明は面白いのでしょうね。

　最後にバカバカしい例を一つ。
１８９７年３月、オーウェン・Ｗ・タフトが組み立て式鳥かごの特許を取得した。

　彼の話には「主に持ち運びに便利なようにバラバラに分解して、コンパクトに収納することが出来る」
「なおかつ数本の針金を個別に、あるいは組み合わせて張ることで、完全に元通りの形に組み立てられる鳥かご」
だということだ。

　そもそも組み立て式鳥かごを使うのはどんな時だろうか。
週末に郊外まで遠出したり、旅行に行く時にペットの鳥を手軽に連れてゆくためだろう。
しかし肝心なことが説明されていない。

　鳥かごを分解して持って行く時に、その住人である哀れな鳥は、どこに入れてゆくのかと言うことである。
ペットも組み立て式だったらよいのに。