静岡ラーメン放浪記

来集軒＠浅草

　「やっちまったよ」
閉じられたシャッターの前に呆然と佇む私。
久しぶりの準備不足でした。

　今回目指したラーメン店は千束にある「元祖恵比寿ラーメン」です。
ＪＲの駅からだいぶ離れた場所にあるので、上野駅からてくてくと歩いて向かいます。
まあ時間はたっぷりありますから良いんですが、それにしても遠いです。
静岡にいる時は自転車がありますから気になりませんが、歩いてみると距離の感覚がだいぶ違ってきますね。
これもラーメンを美味しくいただくための準備運動だと考えれば、少しは気分も晴れるというものですが、結局歩いて３０分掛かりました。

　しかしどうもそれらしきお店はありません。
ネットで調べた定休日は日曜定休ですから、今日は大丈夫なはず。
人気店ですから行列の一つも出来ているはずで、遠くからも分かるんだろうと辺りをうろうろします。
すると見つけました。


　何とシャッターが閉まったお店には無情の張り紙が一つ。
「１１月２４日をもちまして、閉店することになりました」
これはがっくりです。
あの「華蝶」さんの閉店以来という衝撃ですね。
実は帰ってからネットで検索したんですが、しっかり閉店の確認が出来ました。
何で出かけるすぐ前に見ておかなかったんだろうか。
でも、ほんの一月前にはそんな文字は無かったんです。

　気を取り直して次のお店を考えます。
私の場合ラーメンをいただくお店は１軒だけと決めて向かいますから、振られた時のフォローが難しいんですね。
そこでメモ帳のリストを見て近くのお店を探します。
するとぴったりのお店がすぐ近くにあるじゃないですか。
これ幸いと地図を頼りに番地を探します。

　浅草の辺りをうろうろしながらようやくお店を発見しました。
黄色い看板がはっきり分かります。
そして入り口には真っ白な暖簾に鮮やかな赤い文字。
今日はここ「来集軒」さんにおじゃましましょう。

　実はこのお店も浅草の老舗として有名で、私のラーメン放浪のバイブルとも言える「ベストオブザラーメン」にも掲載されているんです。
こういうこともあるからリストを控えて置かなくてはとつくづく感じました。

　お店に入りますと係りのオバチャンが席を指示してくれます。
一人客は必ず大きな半丸のカウンター席に案内されます。
お店の正面が調理場で、左手にこのカウンター席が７席ほどあり、後はテーブルが５脚ほどでしょうか。
１２時４０分と出遅れた時間帯ですが、お客さんは半分ほども入り賑わっています。

　壁にはこんな飾りもあってレトロな感じです。
さらには有名人の色紙が壁一杯に張ってあります。
お冷やを持ってきてくれたオバチャンに「ラーメン（６００円）」を告げます。
ワンタン麺を頼んでいるお客さんが多かったようでした。

　このオバチャン、せわしなくお冷やを注ぎに回っていますが、せっかちなのかな。
永らく接客をなさっているんでしょうが、これもまたお店に懐かしい雰囲気を醸し出しています。
そう言えば昔のお店ってこんな感じだったような気がします。
懐かしい昭和のラーメン店の風情が感じられますね。

　出てきましたラーメンです。
具はチャーシュー１枚にノリとメンマです。
このメンマが甘口に味付けしてあって、柔らかく美味しかったですね。
こういう味付けのメンマ、昔はよく見かけたように思いますが、懐かしい味わいです。

　麺は中太の縮れ麺で、やや堅めに茹で上げられています。
普通の中華麺を想像していましたが、よい意味で期待外れでした。
噛み応えがあって喉ごしもいいし、これは麺を食べているんだという実感が湧いてきます。
また、スープは脂っ気が意外にあってこれもなかなか良いです。
浅草だからさっぱりあっさりとしたスープを予想していましたが、いくらかこってりとした味ですね。

　麺とスープの絡みも絶妙で、これはお箸が進みますね。
レンゲが付いていないので、丼から直接スープをいただきますが、たまには良いものです。
少しお行儀が悪いですが、昔はみんなそうでしたからここは昭和スタイルで行きましょう。

　たちまちにして丼は空になりました。
レジでお勘定をしてお店を後にします。
こういう昔からの変わらない味を維持してゆくのは大変だと思いますが、頑張っていただきたいお店です。